カルガリー便り ― 2007年夏

カルガリーの天候は変化が激しい。また、季節が二つしかない。7ヶ月の冬と5ヶ月の夏。ここでは5月になると「待ってました!」と言わんばかりに道路工事が始まり、一部区間数ヶ月閉鎖となる道があちこちに出現する。そんなわけで、「カルガリーの季節は“冬”と“道路工事”」とも言われている。

私の個人的感覚では、カルガリーの冬は既に10月から始まると思っている。ただ、毎日雪が降るわけでも零下20度を下回るわけでもない。前の夜から雪が降り続いていても、午後には止んで急に気温が上がったりする。気温高低差一日30度などということはザラで、これはChinookと呼ばれているロッキーから吹きおりてくる乾いた暖かい風のせい。Chinookが吹く前後、たいてい私は頭痛がする。この土地に慣れない私だけかと思っていたら、カルガリーはカナダで頭痛薬消費量が一番多いという話を聞いた。カルガリー人も同じなのだ。

ちなみに今年の5月のビクトリアデーは、朝起きたら季節外れのドカ雪だった。その一週間前の週末は25度の真夏日、6月に入ると記録的集中豪雨で街は大洪水、6月後半からようやく安定した夏の日々となっている。

とにかくこの激しい気候の中、風邪一つ引かずに自分の身体がついて行っていることに、自分でも感心する。これは香港で鍛えられたためなのだろうか?

香港。亜熱帯地域に属するため、基本的に年中高温多湿である。ここも季節が二つといってもいいかもしれない。約8ヶ月の夏と4ヶ月の冬。冬といっても10度(プラスです)を下回る日は数えるほどなので、住居やオフィスに暖房は基本的にない。一年中エアコンが効いていて、しかもかなりきついので、建物内と外の気温差は20度近いと言っても過言ではない。香港で9年間も過ごしているうちに、自分の身体が激しい気温変化に耐えらる非常にフレキシブルなものになったようだ。

外の気温が10度台でも温度設定を更に低くしてエアコンを効かし続ける香港。その理由には、「空気が循環していないと気持ち悪いから」というものがある。しかし、室内10度で仕事していると、パソコンを打つ手がかじかんでくる。仕方ないので、私はお手洗いにあるハンドドライヤーで暖をとっていた。ある日、日本から赴任してきたばかりの社員が、あまりの寒さに耐え切れず、自分でオフィス内の温度設定を上げた。数日後、会社の総務部から日本人全員に宛ててメールが飛んできた。『温度設定は勝手に変更しないでください。「郷に入れば郷に従え」でお願いします』

これは半分笑い話ではあるが、「郷に入れば郷に従え」は何処で暮らすことになっても肝に銘じておきたいことである。生活環境の違いに適応していくことは、簡単なようで難しいものだ。

人手不足が深刻なカルガリーでは、いま南米をはじめ外国からどんどん働き手を招き入れている。最近の調査では、「カルガリーはカナダで一番物価が高くて暮らしにくい街」というレッテルを貼られた。Tim Hortonsのコーヒーもトロントより高いらしい。そんな状況に嫌気がさして、カルガリーを離れていく人も後を絶たない。そしてまた人手不足となり、賃金上昇、物価上昇・・・という悪循環に陥ってる感じだ。

私が現在勤める会社では、人手不足というよりも人材不足という感が強い。「素晴らしい夏があるから厳しい冬も耐えられる」と人々は言うが、その素晴らしい夏を十分満喫する余裕もないぐらい私は仕事している。香港時代より収入は少ないのに仕事従事時間は長い。つまり、休息時間が短い。これは自分の予定とちょっと違う。いや、かなり違うのである。このままでは、冬を耐え抜く準備ができない!と、焦りだしているこのごろ。こればかりは郷(会社)に入って郷(会社)に従ってばかりいられない。カルガリーに来て二年目。去年は新しい仕事と生活に慣れるのに精一杯だったが、今年は何らかの達成感と結果を得ることを目標に、日々試行錯誤中である。

福永芳子(89年・経済学部卒)

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